【奈良県果樹研究会レポート】
梨栽培の諸問題について   鳥取果試栽培科長 古田 収
 

  去る11月16日、吉野農業改良普及所において、大淀町が地域農業推進事業の一環として上記のタイトルについて講演会を開催した。古田先生は二十世紀の主産県、鳥取県において、20数年の長きにわたり、ナシ一筋に試験研究してこられ、講演内容は現場に則しており、たいへん勉強になった。

1.最近の話題品種
  ・新水:8月上〜中旬にとれる早生種で、うまいのが最大の特徴である。
      果実は小さいが、肉質は軟らかくて多汁、食味は濃厚である。
  ・幸水:8月下旬が収穫期、果実は300gくらい、肉質は軟らかくて多汁、
      酸味の少ない甘味種である。
  ・豊水:9月上〜中旬が収穫期、果実は大きくやや腰高、肉質はきわめて軟らかく、
      多汁で酸味がある。適熟を過ぎると果肉にみつ症状が生じる。
  ・長寿:7月下旬〜8月上旬にとれる早生種。腰の低い扁円形の赤ナシ、
      果実は小さく、肉質は新水よりも硬い。
  ・清澄:新水の枝変わりで青ナシである。果実の形質は新水に類似している。
  ・おさ二十世紀:自家結実性があり、人工交配は必要ない。
      しかし、実止まり過多となりやすく、摘果に手間取る。
      枝・葉・果実の形質は二十世紀と全く同一で見分けられない。
  ・多摩:8月上〜中旬が収穫期、果実は300gくらい。
      円形で整形、肉質はやや硬いが、多汁で糖度は高い。

2.品質向上対策
  最近、二十世紀の価格は安い。その原因は、品質のよい三水などの進出、および二十世紀の品質の年による変動が大きく、しばしば糖度の低い果実が出荷されるためと考えられる。そこで、鳥取県では二十世紀の品質向上対策として、現場の実態調査をおこない、良品質果を生産する樹姿がわかってきた。よい側枝の姿は、先端に二本の発育枝が出ており、そのうちの一本はやや弱い発育枝である。
  そして、途中は短果枝でおさまっている状態である。もし側枝の基部や中間部に発育枝が出ているようでは、糖度は低く変形果の発生も多くなる。側枝を好ましい姿にするには、側枝数を減らし、平均長90〜100Bの側枝を残す。また長い側枝を残すためには亜主枝間隔を広げる必要もある。亜主枝間隔は1.7m、亜主枝の片側に残す側枝間隔は70Bくらいが適当である。亜主枝を間引く方法は、まず基部の側枝を除去して、先端部に結実させる。そして、残す亜主枝基部に充実した側伎が得られた後に間引きする。こうして骨組みを広くした好ましい樹姿は、主枝が3本で、主枝あたり亜主枝が3本である。
  しかし、主枝の先端が隣接樹と交叉しているような密植状態では、亜主枝や側枝の間引きだけでは充分な効果が得られなかった。そして根本的には間伐が必要と考えられ、現在鳥取県では間伐を勧めている。その方法は、当初5.4×5.4m(10aあたり33本)に植えられていたものを、半数に間伐している。
  良品質な果実を生産するには、好ましい樹姿にもってゆくことが基本となるが、その他の要因として、一つは8月の雨である。この時期に雨が多いと糖度は低下する。その対策は難しいが、表面水は早く園外に出すことが大切であり、ビニールマルチも効果がある。他の一つは果実袋の種類である。パラフィン袋は黒斑病防除効果が大きく、一般に普及しているが、果実糖度は低下する。鳥取県では外側がパラフィンの改良合せ袋を奨めている。

3.産地を視察して
  大淀の産地について指摘されたことは、まず樹間距離が4.0〜4.5mと、密植状態であり主枝の先端が弱っている。また、樹姿は主枝・亜主枝が多く、そのためにも先端が弱っている。先端を強めるには、先端部に発育枝をたくさん置くことが大切である。また、鳥取県でも勧められているように、樹型の骨組みを広くとることと、間伐することが大切であろう。土壌については、重粘土なので有機物を投入して、土作りすることが大切だろうと指摘された。

4.質疑応答
  1.  品種の動向について
二十世紀には黒斑病に弱いという欠点はあるが、作りやすく、収量の上がる品種である。鳥取県では今後も二十世紀が主幹となり、労力配分と二十世紀偏重対策として、新品種を導入してゆく考えで、現在は新水を増やしている。収穫を連続する品種の組み合わせとしては、たとえば新水・二十世紀・新高・新興・新雪となる。
  2.  マルチについて
春先、梅雨明けの乾燥に対しての効果は大きいが、今年のように雨の多い年では果実糖度が低くなる。マルチの方法は、ワラを束のまま並べるような厚いマルチではなく、切りワラを全面に播くのがよいだろう。
  3.  施肥量について
二十世紀の窒素施用量は、10aあたり10〜15Lで指導されているが、現場では15〜20Lと、やや多めに施用されているようである。そして二十世紀の施肥量を基準として、新水、幸水は3〜5割増、豊水は同程度が適当であろう。
(文責、農試果樹課 米田義弘)