【奈良県果樹研究会レポート・昭和39年】 
なしの生理 理想的な枝の伸び方 


  梨の生産力は貯蔵養分によってきまります。この貯蔵養分と枝の伸び方(生態)との関係をみてみましょう。
理想的な枝の伸び方とは、一口にいって早く伸びて早く止まる、つまり成葉化が早いということです。貯蔵養分が豊富な枝(良い枝)は、始めから勢いよく伸びて、養分転換期(5月中旬)にも、あまり休むことなく旺盛に伸び続け、6月上旬頃から次第に伸長を停止します。
 
  一方、養分に不足した枝(悪い枝)は、展葉期がおくれ、伸長期に入っても弱い伸び方しか示さず、養分転換期には殆ど停止して、しばらく休息して、再生長に入り、これが遅くまで伸長を続けます。転換期に一時停止をすることは、いうまでもなく貯蔵養分のタネ切れを示すもので、再び伸長を開始するまでに、展葉した葉で作る同化養分をある程度蓄積しなければならない状態におかれます。こうなると、せっかく新しく作った葉も自分の枝葉を伸ばすためだけの同化養分生産にとどまり、果実を養うのに充分働いてくれないことになります。

  先にも述べましたように、果実細胞分裂期にも、その後の肥大期にも同化養分が不足して、果実は決して太らないばかりか、根から送られてくる窒素が消化できず、いつまでもダラダラと細伸びして病害虫の抵抗を弱めます。
 試験では4月中に展葉した葉は黒斑病の被害が少ないのに(短果枝の葉が発育枝より黒斑罹病率が低いことと一致します)、6月下旬以降の葉は数が少ないが罹病率が極めて高いという結果がでています。(島根農試)。
  このことは、悪い枝が病気にかかりやすく、理想的な伸びを示す良い枝は病気にかかりにくいことの一つの証明になりましょう。貯蔵養分の豊富な良い枝は萌芽後の芽が赤く、必ず豆葉が大きい特長をもっていますが、根から送られてくる窒素を貯蔵養分で消化してしまって、可溶性窒素が速やかに不可溶性窒素(たんぱく態)に変わるので、枝や葉の組織が安定します。
 
  可溶性窒素分が組織内で高い含量を示すことは、病菌の餌になりやすいために繁殖が容易となり、保健上好ましくありません。したがって良い枝は病害抵抗性が自ら備わっていると申せましょう。もっとも、抵抗性の問題は、貯蔵養分量だけに関連しているものではありません。現在知られていることは、可溶性窒素を不可溶性窒素に変える働きに、苦土やマンガン等の微量要素や、加里が欠かせないといわれます。この中で、苦土は果実の味を良くするのにも必要だといわれていますが、日本のような多雨で酸性の土壌には、極めて流亡しやすい性質がありますので、2〜3月に苦土石灰を補給することは前述の点からも必要です。(反当約100L、施用効果は2〜3年後から現われる)。