【奈良県果樹研究会レポート 昭和40年】 今年の二十世紀梨の栽培を省みて 向出 安男 昭和40年は災害の年であったといえる。初春に於ける雪害、続いて異常気象による春の生育の遅延、7〜8月の早害、9月の23号、24号と相次ぐ台風被害等々、異常気象と災害の年といえる。早害による小果は、本県のみならず鳥取や他産地も同様にて、反当りの減収減益をまぬがれることはできなかった。本県に於ける梨栽培の現状及び将来を予測するとき、その栽培面積や収量が飛躍的に増大する事は考えられない。また、ミカン・カキ・リンゴの如く集団大産地の形成も望まれない。栽培面積がこのように停滞気味であるのは、農村労力の流れによる枯渇と労賃の高騰からくる圧迫のため、園管理の困難や放棄傾向の一部にあるのは否めない。更に二十世紀梨はオウトウと共に果樹の内でも最も労力を多く要する果樹であり、なかんずく袋掛けに要する労力は全体の30〜40%を占めており、その省力化は最も急を要する課題である。果たして10年後に於いて現在同様な労働内容で袋掛け作業が出来得るであろうか。これを考えるとき、袋掛け作業がどの様に変わって行くかが、二十世紀梨今後の盛衰を決めるポイントになるものと思われる。 本年は黒斑病の発生が昨年度より全般的に少なかった様であるが、黒斑病多発地帯に於いては、今後早生種の採用を大いに考えるべきであると思われる。二十世紀梨は整枝剪定花芽の着生も容易であり、従って反収等何れの面より見てもこれに勝る品種はないが、唯一、黒斑病に極端に弱いという最大欠点のあるのが栽培面積の制約される一因でもある。これが克服の容易な地帯に於いては、特色ある本県産二十世紀梨の栽培に専心されるならば、必ずや他の果樹に比して劣らない収益を上げ得るものと確信する。また、黒斑病多発地帯、或は園に於いて早生種の導入をする事に依り収穫時の労働ピークを崩し、また例年の様に来襲する台風時期迄に収穫を完了する事に依り、安定した経営をする事が出来得るが、現段階に於いて早生の優良品種のない事が吾人の最も渇望する所である。 最後に梨栽培をされる諸兄に望みたい事は、今後、如何にして生産性を格段に飛躍させるかが当面の急務であり、必ずしも反収の高さだけが問題ではなく、直接的、間接的に省力法を推進する要素を検討され、本県産梨の名声の高揚に努められる様切望して擱筆する次第です。 |