【奈良県果樹研究会レポート・昭和49年】
吊り棚によるナシ棚の改良  中吉野農業改良普及所 前 悦久


  県内のナシ園には棚の不完全なものや、改良しなければならないものが極めて多く、なかにはナシの樹で棚がささえられているようなひどいものもある。棚の不完全なことによるマイナス面は非常に大きく台風の被害を大きくし、薬剤散布、収穫、運搬作業などがやりにくく、剪定や棚付けに手間取る一方、徒長枝の乱発を招き品質や収量に影響する。また、棚が完全であっても従来の棚では中柱がじゃまになって、SS、耕耘機、運搬車などの機械作業の能率をさまたげるのが実情である。従って、現状のナシ棚では大なり小なり欠陥があるので新しい吊り棚の架設について述べたいと思う。

1.棚の構造
   従来の棚では主として樹間に幹線、補助線の3本の線が張られている関係から棚のマス目が大きくなる欠点があり、大きすぎるため枝の誘引に手間取る。この点を改良するため小張線を新たに数本張り、甲州式棚とし、中柱は全ての作業にじゃまになるので樹の株元に鋼管ポールを立てて吊り棚とする。棚の高さはトラクター、SS作業を容易にするため従来の棚よりやや高く、1.6〜1.7m位とする。周囲柱の位置は機械の出入を楽にするため樹列に揃え、周囲柱と第一列樹の間隔を十分にとって機械の方向転換や作業が出来易いようにする。一枚の棚の大きさの限度は、強度や作業性からみて大体40アールから50アール程度を標準とする。
 
2.棚の資材

  1. 柱
    これまでの棚の改良には主としてコンクリート柱が使われてきたが、
    コンクリート柱は横からの衝撃に弱く、運搬や架設作業も容易でないので
    果樹棚用の防サビ処理の鋼管か、STK‐51の構造用鋼管を使用する。
  2. 線材
    軽くて引っ張り強度が大きくサビにくい果樹棚用半鋼線が
    亜鉛引き鋼線より有利である。8番の鉄線は12番半鋼線引っ張り力に相当し、
    半鋼線を使えば12番と14番の大きさで、
    価格も同じ構造であれば半鋼線の方が安くなる。
  3. 捨て石
    棚の架設でもっとも労力の多くかかるのが捨て穴掘りである。
    この穴掘りを簡単にするために電柱や支線などに使用している
    打ち込みアンカーを利用すると便利で、
    しかも引っ張り強度が大きく十分効果がある。
 
3.棚張り
  1. 棚の設計
    棚張り作業にかかるまでにまず園の形を実測して
    樹の位置を入れて方眼紙に縮尺した図面を作り、
    それに周囲柱、幹線、小張り線、つり柱の位置などを作図する。
  2. アンカーの打ち込み
    まず打ち込み位置を決め、アンカー専用打ち込みパネルを使用し、
    十分打ち込むことが大切である。
  3. 周囲柱を立て幹線を張る
    周囲柱は樹列に揃え、60〜70度の傾斜とし、
    柱の根元を揃え捨て線が柱の中心にくるように位置付ける。
    捨て線は12番半鋼線2本よりで使用し、双又で柱をささえ、
    柱の頂部を捨て線で結び、
    相対する柱間を幹線(12番半鋼線)で結びバイスで引張る。
  4. 隅柱を立て周囲線を張る。
    隅柱は50〜60度の傾斜でたて、
    捨て線は14番半鋼線7本よりの周囲線用ワイヤーを使用する。
    捨て線を結べば隅柱をささえて周囲線を張る。
    園の大きさ、形によって2〜4ヶ所バイスを入れ、
    隅柱が所定の位置におちつく程度の強さに引っ張る。
  5. 補助幹線・小張線
    補助幹線(12番半鋼線)と小張線(14番半鋼線)を張る。
    引っ張りの程度は線がたまらない程度とする。 
  6. 棚の吊り上げ
    まずつり柱の位置をきめる。原則として樹の株先とし、
    つり柱の間隔は柱の長さによってきめる。
    このことは強度上から棚線とつり線のなす角度30度以上に
    保つことが条件となる。
    例えば5.5mのつり柱では柱の間隔は13mが限度となり、
    5.4m植えでは樹一本飛び、4.5〜4.0mでは樹二本飛びで配置する。
    吊り上げの位置は幹線の交差点と補助幹線の交差点とする。