【奈良県果樹研究会レポート】 ナシのせん定を考える 長果枝せん定 岩本 和彦 1.はじめに ナシの整枝は我が国特有の棚仕立てであり、短果枝せん定を中心にすすめられてきたが、何時の時代も整枝・せん定の無理から生ずる徒長枝の乱立で樹勢調節に苦労している。一般に徒長枝が樹冠内部を頂点として、枝先に向かって短くなっている樹形が多く、これらの樹では先端部分には高品質の果実が収穫できても、樹冠内部の品質は悪く、梅雨期に基部葉の早期落葉もみられる。中には短果枝栽培でも高品質の果実を生産している園も見受けられるが、この園では徒長枝の発生が少なく、しかも樹内部と先端に差が見られず、樹全体によく太陽光線があたるからであろう。ここに述べる長果枝せん定も一つの方法であり、吉野普及所管内では3年前より福島県の円谷先生を招いて研究がすすめられており、その基本となるべき点を再確認してもらうとともに、皆さんに考えていただく材料として提供した次第です。ところどころに他の果樹でもヒントになる点があるので、各々の果樹栽培でも考えていただいて自分の栽培に参考として下さい。 2.短果枝せん定と長果枝せん定の違い 大きく違う点は骨組みと結果部である。短果枝せん定ではそのほとんどが主枝や亜主枝上に直接結果部を構成するので、骨組みも自然と多くなって樹冠内部の結果部がなくなり、枝先へと結果部が逃げていく。 また、先端部にも着果させるため内部徒長枝が乱立し、日照不足となって悪循環を生じている。一方、長果枝せん定では必ず側枝に結果部を構成するので、骨組みが少なくてすみ、樹冠内部へは返し枝の利用によって結果部を構成できる。この点はブドウの整枝、せん定の考えと同じである。 3.長果枝せん定の考え方 棚栽培であるため、徒長枝が立ちやすいので、養水分の流れをスムーズにすることが大切となる。短果枝や長果枝にかかわらず、この自然の力をうまくコントロールすることがポイントとなる。長果枝栽培では主枝と亜主枝に果実を着果させず、常に主枝と亜主枝の先端を強く管理し、各々の側枝にも同じような管理をして基部に強い徒長枝を発生させないようにする。つまり、各部分の先端部にポンプの役目をもたせて、養水分を充分引っ張ることにより徒長枝の発生を抑えている。 また、いくら地上部を吸い上げる樹づくりにしても、根の活力が低下していてはその効果も少ないので、必ず地下部の管理を十分行なって活力のある樹にしておくべきである。要するに地上部は養水分の吸い上げポンプであり、地下部(根)は養水分の押し上げポンプの役割となるので、これらがうまくかみ合わさないと活力のある樹づくりはできないし、小手先の技術ではとても生産安定は期待できない。 4.長果枝せん定のポイントと注意点 1. 骨組みである主枝・亜主枝は少ない方がよく、普通主枝2本、亜主枝4本で、やせ地などでは主枝4本の亜主枝8本でもよい。なお、亜主枝間隔は少なくとも1.5〜2.0mとし、先端から1m以内には着果させず、各々の先端は2芽残して強く切り返す。 2. 結果部は必ず亜主枝から側枝を出して構成し、主枝や亜主枝に短果枝をつけないことが基本である。 3. 考え方は側枝の更新にあり、3年をメドに更新していくため、毎年全側枝数の30〜35%の予備枝を確保することが条件となる。その方法として側枝より弱い枝を切り返して、翌年の側枝として育てることである。 4. 結果部である側枝は品種により多少異なるが、Fあたり2〜2.5本(坪あたり7〜8本)の長果枝を残し、25〜30B間隔に配置して、1長果枝あたり7〜10果程度着果させる。 5. 原則として1年枝の腋花芽は2花芽に1果、2〜3年枝の短果枝には全部1果ずつ着果させて、1側枝あたり10果程度とする。なお側枝(長果枝)が強い場合には、ひとつの花芽に2果結実させて樹勢を調節する。 6. 側枝の先端はポンプの吸い上げの役目をさせるため、2芽は摘らいを行なって少なくとも30〜45Bの発育枝が出るのが望ましい。なお、長果枝が強勢な場合には切り返しをせず、それ以外は上芽で切り返しておく。 7. 主枝や亜主枝の先端で伸ばす場合は横芽もしくは下芽で切り返し、その他は必ず上芽で切り返す。その理由は上芽で切り返すと発芽が早くなり、ポンプの役目を早くからすると同時にそれ以下の芽が強くならないためである。 8. 側枝の基部のしわ芽はそのままとして、それから先端までの上芽の葉芽(特に基部に近い部分)は強い発育枝、もしくは徒長枝となるので、せん除するか芽かきを行なう。 9. 側枝(長果枝)の誘引はていねいに細かくすることが大切で、そのために棚の針金は30B間隔に設ける。なお、誘引は必ず先端が棚面より下がらないようにし、下がってしまうと先端より基部の発育枝が強くなってしまう。 5. 短果枝から長果枝せん定に切り替える場合の注意点 1. 亜主枝間隔を広げるために3〜4年計画でぬいていく。少なくとも1.5〜1.6mの間隔とするが、目安は1年に1本程度の亜主枝または太枝をぬいていく。 2. 主枝と亜主枝の先端を強く切り返して、少なくとも60〜70Bぐらいの発育枝が出るのがよい。樹の性質として強く切られれば強く伸びようとするので、先端部が強くなって養水分の流れが良くなる。 3. 次に主枝と亜主枝上の短果枝(ショウガ芽)を除去するが、そのシワの部分は必ず残して切ることがポイント。翌年この切り口から発育枝が発生するので、夏場に花芽が着くように管理をして側枝として利用する。 4. 1年目に亜主枝から直接側枝が取れないので、3年枝までを限度として利用する。つまり短果枝から出た強い発育枝を残せばよく、二十世紀ではこの方法を用いると収量減にならない。 5. 新水は花芽がつきにくいので、夏の間に誘引するとともに早く着果制限することが大切で、二十世紀のような考え方で栽培すればよい。 6. 幸水は樹勢が強いので長果枝栽培に向く。長十郎のような考え方で栽培するが、樹間距離は広くとり、主枝は2本の4本亜主枝が管理しやすい。また、新水同様夏の管理が大切で芽かきや誘引を行なって花芽の着生を良くする。利用する1年枝は太いものの方が果実の肥大が良く、玉揃いも良い。 7. 豊水は1年枝にでも花芽がよく着くが、発育枝がわい曲して下へ垂れるので、摘芯して2番枝を出させるか誘引するとよい。 8. この長果枝せん定も含めて基本は土づくりを計画的にすすめることである。特に切り替えを決意した年から順次深耕を行ない、地上部と地下部のバランスを崩さない肥培管理にもっていくことである。 6.まとめ 長果枝せん定についてその概要を書きましたが、この方法がナシ作りの最良の方法ではありません。この中の考え方なりその方法の中で、参考になる点がありましたら利用していただいて、今以上にナシ栽培が安定することを期待します。いずれの果樹でもそうですが、ある技術だけ導入しても効果の出るものでなく、年間通しての栽培技術があってのことである。長果枝せん定でも開花期の受粉を確実にしないと、樹があばれて失敗する。また、多くの良い点があるものの、熟期の遅れなどの欠点もよく理解した上で導入されるよう注意されたい。実際に長果枝せん定をされている方々もおられますので、御意見をお聞きかせいただければ幸いと存じます。 (吉野普及所技師) |
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