【奈良県果樹研究会レポート】 ナシ三水の整枝せん定 福長 信吾 農林省育成の赤ナシ系品種、新水、幸水、豊水を一括して三水という。これらの品種はそれぞれにクセがあるので、それをよく呑み込んでせん定しなければならない。基本的な整枝は三水に共通するものであるから、先ず整枝の面から述べる。 1.整枝 主枝は3本の肋骨整枝とし、側面への主枝誘引角度を45度にする。第一亜主枝は 主枝分岐点より1〜1.3mからとり、約50Bおいて第2亜主枝をとる。対向主枝から出した亜主枝との間隔は片側約50Bとする。主枝、亜主枝の先端は上げること。側枝化する一年生枝はできるだけ屈曲させないで誘引する。主幹の上部空間は第一亜主枝から返し枝を引っ張って埋める。 2.せん定 《幸 水》 幸水のクセとして次のことを知っておかねばならない。 1. 盲芽や中間芽ができやすい。 2. 樹令が進むほどに短果枝がつきにくく腋花芽となりやすい。 3. 枝は裂けやすく折れやすい。 4. 胴枯病に弱い。 以上のことを考えるとせん定だけでなく、より大事なことは新梢管理(生長期)にあることがわかる。盲芽や中間芽は日照不足から生ずるので、まず枝が混み合わないよう採光のよい枝の配置にすること。腋花芽を利用するため長果枝が多くなるだけに、このことは大事である(間引き)。ついで徒長枝(陰芽から出やすい)による日陰をなくすため、5月上〜中旬に芽かきをする。短果枝がつきにくいといっても若木時代は比較的よくつく。それで若令のうちは二十世紀型せん定の感覚でよい。 しかし樹令が進むと、腋花芽利用の長果枝に結実の主体をおく(長十郎型)。腋花芽の着生を確実にするため、新梢を6月下旬〜7月上旬に20〜30度の角度に誘引する。枝が折れやすい点については、夏に誘引して枝を倒しておく。胴桔病については切り口の大きいものは接ロウを塗布しておく。 せん定について補足するのは次の点である。短果枝のつきにくくなった樹令のものは結実の主体を腋花芽におき、利用する花芽の70%は腋花芽にする。(長果枝)長果枝は花芽がつくと先端部に結果部が逃げてゆくので、3〜4年で更新して結果部を基部に返す。中果枝(鉛筆大の太さ)は4〜5芽で切って発育枝(1〜2本)を出させ、来年これを利用する。長果枝の先端に弱い枝が出ているときは、その枝を2芽に残して発育枝を出させ枝の強化をはかる。花芽の整理は果台の大きい、上向きか斜め上向きの芽を残す。 《新 水》 新水のクセ 1. 頂部優勢性が強く、枝の発生が少ない。 2. 短果枝はよくつくが、日当りが悪く充実した枝でないとつきにくい。 3. 腋花芽はつきにくい。この花芽の果実は太り、果型いずれも不良である。 枝の発生の少ない点については、枝を必要とする部分に、横または斜め下に位置する芽の上に、3月中〜下旬頃に鋸で目傷を入れて発生を促す。充実した枝にするには5月中旬に枝の背中からでる芽を芽かきし、新梢は6月下旬頃、誘引して基部までよく光を当てる。 短果枝をつくるためには、充実した新梢を先端に近い赤みを帯びた部分を切り落とし、褐色の部分を残す。この枝の夏の管理(日照り)がよければ良好な短果枝が枝の基部まで揃う。側枝化する一年生枝は小指大のものがよい。側枝の更新は4〜5年で行なう。花芽の整理は果台の大きい、上向きか斜め上向きの芽を残す。中間芽は翌年のよい花芽になる。 《豊 水》 豊水のクセ 1. 枝が下垂しやすく捻曲しやすい。 2. 枝の充実が新水、幸水より弱い。 3. 腋花芽はつきやすいが、果型の乱れが多く、 その上、暖冬のときはボケ芽になりやすい。短果枝を結実の主体におく。 枝が下垂しやすく一般に弱いので、主枝・亜主枝の先端は枝柱をそえて、まっすぐ伸ばす。先端は必ず葉芽で切り返す。側枝はやや強いものが大果をつくり、短果枝も維持しやすい。側枝化する発育枝はやや強く切り返す。側枝の更新は3〜4年で行なう。枝の充実をはかるため、枝の配置をよくし、芽かきと新梢誘引については幸水・新水と変わらない。花芽の整理も同じく果台の大きい上向きか斜め上向きの、よくしまった光沢のある芽を残す。 以上が、せん定の概要だが施肥について以下に付け加える。 3.施肥 1. 土壌改良 深さ30〜40Bに重点をおく。排水をよくすること。穴には腐熟堆肥、テンポロン、アズミン、ようりん、苦土石灰等をよく混ぜて入れる。細根の発生を促すには10〜11月が作業時期としてよい。 2. 施肥 若木時代はチッソ過多にならないこと。成木園では10a当たり3.5tの収量として、チッソ18〜20L、リンサン17〜18L、カリ2L(成分)を目安にする。元肥として11月上〜中旬、チッソを年間の70%、リンサン100%、カリ50%、追肥として6月上旬、新水、幸水はカリのみ30%、豊水はチッソ10%、カリ30%、秋肥として新水、幸水は9月上旬に、豊水は9月下旬に残りの分を施す。 なお、苦土石灰は冬季(11〜1月)の間に10a当たり200〜300Lを施用し耕耘機で中耕し土とよく混和する。最近、早期落葉症状が増大しているので、整枝せん定、誘引等で日照りをよくすることのほか、土壌に石灰や苦土の補給によって、その防止をはからねばならない。 (専門技術員) |