梨の小話

梨の成分と効能

カリウム
体の塩分を排出する作用があり、血液をサラサラにしてくれるため高血圧予防にも効果があります。

カリウムは不足しやすいミネラル
カリウムはいろんな食品に含まれます。野菜、肉類、いも類、海草類、豆類、穀類、これらの中に含まれるカリウムは調理をしたときに失われる率が大きいのです。たとえば煮た場合30%もの栄養素が失われます。その点、調理無しで食べることの出来る果物類はカリウムの供給源となります。筋肉がエネルギーを作り出すときに不可欠なミネラルでもあります。心臓を動かすのにもこのカリウムが欠かせません。アルコールや甘い食物のとりすぎ、下痢やストレスなどもカリウムを減らします。

ソルビトール(甘みの成分の一種)
他の果物と比べても、梨に含まれるソルビトールはダントツの多さを誇ります。
他の糖類と比べて体への吸収が遅く吸収されなかった糖分が大腸に到達したときに、腸内の善玉菌のエサとなって大腸を刺激し便秘の改善を図ります。又熱を下げ咳止めの効果もあります。

アスパラギン酸
アンモニアを対外に排出する作用と疲労にたいする抵抗力を高めてスタミナを増強する効果があります。

タンニン
アルコールの排出を促す成分です。二日酔いのときに冷やした梨を食べると最高です。

梨のよもやま話

現在市場に出回っている梨の品種の八割は二十世紀の梨の血を引き継いでおり、8月に出回る赤梨の代表的な品種の(幸水梨)は、二十世紀梨の孫にあたります。 又昔の人は、梨のことを「ありのみ」と呼んでいました。これは平安期に出された歌集の「相模集」や「山家集」に出ているようです。 何故ありのみなのかといえば、梨という言葉は「無し」と言う意味を持っているという意味を嫌ってのことでしょう。梨の花言葉は「和やかな愛情」です。

山家集(ナシ・アリノミ)の短歌

△梨ナシ・アリノミ
年ふれどかはらずながらつれなしの あらぬ物にも身こそ成ぬれ
                            (新撰六帖 六 家良)
 
いたづらにおふのうらなし年をへて 身は数ならず成まさりつゝ(同 為家)
 
をきかへし露ばかりなるなしなれど 千代ありのみと人はいふ也(相模集)
 
花の折かしはにつゝむしなのなしは ひとつなれどもありのみとみゆ(山家集 下)
 
甲斐がねに咲にけらしなあし引の 山なしをかの山なしの花
             (甲斐国志 百二十三産物及製造(夫木集 能因法師))
 
△鹿梨ヤマナシ・アリノミ
山なしの花しら雪ふるさとの 庭こそさらに冬ごもりけれ
                     (夫木和歌抄 二十九梨 民部卿為家)
 
足曳の山なしの花咲しより たなびく雲のおもかげぞたつ(新撰六帖 六 家良)
 
きゝわたる面影みえて春雨の 枝にかゝれる山なしの花(同 為家)

参考:吉川弘文館発行「古事類苑」

梨の歴史

日本での梨の歴史をみてみましょう。今から1300年くらいに書かれた『日本書記』に、桑・栗などど共に梨の栽培が奨励されたと書かれています。奈良時代に始まる貴族の時代では、梨は花を愛でると同じに儀式の際にも重要でした。『万葉集』に、

「梨、棗、黍に栗嗣ぎ、延ふ田葛の後も逢うはむと葵花咲く」(巻16)

という歌があります。また、平安時代の歴史書の『三代実録』には、桜と桃と一緒に梨の花が開いたとあります。 儀式の為の梨では、同じく平安時代の『延喜式』に神様に供えるものとして梨があげられており、信濃国(長野県)や因幡国(鳥取県)から梨が献上されたともかかれています。 他に1060年ぐらい前に編された『和名類聚鈔』にも梨がのっています。 鎌倉時代の有名な歌人である藤原定家の著した『明月記』によると、旧暦の三月頃梨の花が開き、九月頃に梨の実がなり、更に土産ものとして梨をもっていったなども書かれています。 室町・戦国・安土桃山時代の『多聞院日記』には、みやげもので持っていったこと、あるいは、アリノミ(梨の別称)のつぎ木を春とした等、様々な記事がみえます。 また、あまなし、いはなし」というように梨の種類があげられています。江戸時代の梨は、食べ物として様々な文献に書かれます。 例えば、元禄十年(1697年)刊行の『本朝食艦』では、調理法はどのようなものなのか、どこの名産か、と現代のグルメ本のはしりと言えましょう。 江戸時代後期~明治時代には、各地での生産技術の発達に伴って、梨を含めた果樹栽培法について述べた書物が多く書かれています。 幕府は、享保・元文(1735年前後)に全国各地から産物帳を提出させ、これによると梨の名称だけで、百余種判明します。 大蔵永常の『広益国産考』、佐藤信渊の『草木六部耕種法』は江戸時代、藤井徹の『草木栽培法』、小田鬼八の『実験梨樹栽培全書』、『日本地誌略物産弁』は明治時代のものです。 これらは、江戸時代や明治政府が自国に利益をもたらすために栽培を勧め、その結果生まれた指導書でした。

梨の民話 へつこきよめ

むかし、あるところに、ばあさまと兄さがあって、その兄さが嫁さをもらった ってや。 嫁さは、器量よしで気立てがよくて、働きものだったから、ばあさまも 兄さも喜んで、幸せに暮らしていたって。 ところが、しばらくすると、嫁さの顔色がみるみる悪くなってきたので、ばあ さまが心配して尋ねると、嫁さは『へをがまんしているから』と、消え入りそう にゆうた。 それを聞いた、ばあさまが『今日は、おまえとおらだけだで、こいたらええが な』というたので、嫁さはほっとしておもいきりへをこいた。その大きいこと、 大きいこと。 ばあさまは、風にふっとんで、庭の樹のてっぺんにひっかかってしまつた。 お まけに髪の毛まで吹っ飛んで、ばあさまの頭が丸坊主になってしまったので、あ にさは怒って嫁さを親元に返すことにしてしまった。 次の朝、兄さは嫁さを連れて家をでた。 すると、途中に大きな梨の樹があって、子供たちが大騒ぎをしていた。梨の実 を取ろうとしているのだが、樹が高くて届かない。 嫁さは、ボッボーンと大きな へをこいた。すると、大きな梨の実がバラバラと地面いっぱいに落ちてきた。 そこへ、殿様が通りかかり、のどが空からに乾いていた所だったので、殿様も 家来も子供たちも、梨にかぶりつき夢中でほおばった。 そして、殿さまは褒美と、嫁さの両手にのりきれないほどの小判をくれたって。 兄さは、嫁さにあやまって、また家に戻ってもらい、それからは三人仲良く、 暮らしたっていうことじゃ。

※松戸市文化ホール「はばたけ二十世紀梨」より参照。

梨について

梨は百果の長といわれるほど、果物の中ではとりわけ珍重されているものである。 特に、胃腸病の人などにはとりわけ珍重されてるものである。梨の特性として、風や寒さの激しくない東南向きの肥えた土地がよい。 屋敷の周囲や、屋敷内の菜園の垣の近くで、湿気が少なく暖かな所で成育しやすい。 一般に、梨ばかりでなく大きな果物をつける木は温和の気をたいそう好むものなので、適地は、地味が肥え、気候の温和な土地と心得てよろしい。 痩せ地で土俵が浅く硬い土地などでは、たとえ実はなっても小さくて味がよくない。屋敷内に植える場合でも、暖かい場所を選ばれなくてはいけない。

繁殖には接木が一番よい。さし木でもよく活着する。実生の場合は、よく熟した味のよい大きな果実を切り割って種子を採って播く。 翌年苗が生えたら翌々年の春二月に、苗地の近くに肥えた熟畑に肥料を入れて整地し、 四、五尺またはそれ以上の間隔をおいて一本ずつ移植する。 ときどきうすめた下肥や米の磨ぎ汁などをかけると、 だんだん成長する。冬になって葉が落ちた時、土ぎわから刈って、刈り口を炭火で焼いておくと側枝が出る。 側枝は二年たつと大きくなり、やがて結実するようになる。

接木は、一月に芽が少し出ようとするとき、日なたのよく太った枝から立派な穂木を切り取って接ぐのである。 日陰にほうの枝を用いると結実がおそく、またなりも少ない。

さし木にするには、二月中頃に肥えたりっぱな枝をとり、一尺四、五寸くらいの長さに切って、 基部と先端をそぎ、炭火で両方とも焼いておく。これを肥えた土地に掘って適当な間隔に並べて植え、 肥土で覆土し、しっかりと踏み付けて日覆いをしておくと全部活着するものである。

梨の貯蔵法

家の影に穴を深く掘り、穴の底に少しも湿気のないように枯れ葉を敷いておく。梨はすこしでも、傷つけたり傷めたりしないよう木からもぎとり、穴のなかに並べ、水のかからないように覆いをしておく。
こうしておけば翌年の夏まで品質を損なうことはない。(この方法では土地の高い所の屋敷など湿気のないところでないともたない)また、大根と梨とを穴の中に混ぜて並べておいてもよい。あるいは梨の果梗をさして穴の中に貯蔵しておいても夏までもつということである。いづれにしても、この貯蔵穴には日陰のきわめて感想した場所を選ぶべきである。

○梨の皮をむいて果肉の薄い切片をつくり、火にあぶって乾かし、菓子にするこれを梨花という。このようにして作った梨の名物、梨花は、遠い国からの貢ぎものにすると書いてある。また、酸っぱい梨を煮ると甘くなるものである。一般に梨は果物の王様といわれるだけあって、菓子のうちではすぐれた珍味である。

※日本農業全書13より

ニホン梨の生理機能

ナシに多く含まれている無機成分はカリウムで、ナトリウムはほとんど含まれていません。
そのため、カリウムとナトリウムの比が低く、高血圧予防に有効です。またナシにはソルビトールが果肉100gあたりおよそ0.8g含まれており、果物の中でも特に多く含まれています。ソルビトールは、低カロリーであり虫歯になりにくい糖質として知られています。また、ナシ・リンゴを豊富に取り入れた食事の介入試験から、12週間で約1.22kgの体重減少が認められています。
(文責 杉浦 実)

ニホンナシ 文献
Conceicao de Oliveira M et al. 2003 Weight loss associated with a daily intake of three apples or three pears among overweight women. Nutrition 19(3):253-6.